新型うつは詐病なのかどうか
新型うつ、もしくは非定型うつと呼ばれるうつの症状が労務管理の場でときどき話題にのぼります。行動からみて詐病なのではないかという文脈で語られることが多いようです。これについて考えてみたいと思います。
新型うつの特徴といわれる根拠
新型と呼ばれるぐらいですので「今までは見たことがなかった」ということが根拠です。
- 仕事の時だけうつになるが退勤後は元気
- 休職中に趣味の活動は活発
- 就業規則や法律など制度をよく調べていて上手に利用する傾向がある
- 他責的で会社や上司など周囲のせいにする
では従来型の「今まで見てきた」うつはどんなものででしょう。
- 仕事の時だけでなく休みの日でも、ほぼ常に気分が落ち込んでいて行動できない
- 休職中でも調子が上がらない
- 思っていることや意見を言い出せない
- 自責的で自分が悪いと思い込む
確かに真逆ですよね。真逆に見えるのに提出された診断書にはうつ病と書いてある。混乱するのも当然かもしれません。新型うつというのは学術的にもまだ正式なものと認められていないようですので、いよいよ疑わしい。医師に取り入って診断書を書かせているのでは、と穿った見方をしてしまうのも無理はありません。
うつが始まって終わるまで
私は通算7年間うつと付き合っていますが、振り返ってみると実は両方の場合があったなと思います。うつには始まりから収束までに波があると言われています。
気分が優れない日が時々あって、身体的な不調が起こって、という変化が出始めます。でもどうにか仕事はできるし、日常生活も億劫ではあるけどまあ年齢的な衰えの範疇かなと思っている段階(うつ状態:誰にでも思い当たるフシがありますよね?)。それでも生活リズムを変えないように頑張っているとある日突然(と本人には感じられる)体がいうことをきかなくなってドクターストップがかかる(うつ病)。療養しリハビリしてい調子が上がって元のリズムにも戻ったかに思えたら、また落ちてを繰り返しながら(うつ状態:こちらはうつ病を経験していない方にはイマイチ理解できないかもしれない)、復活。大きく3つの段階を経ると言われています。私は今最後の段階。 そのなかで、始めと終わりにあるうつ状態という段階を振り返ったとき、新型うつと言われるものと非常に似た行動をとった経験があります。でもうつ病という状態のときは確かに寝たきりなのでした。
加えて、どの時点を切り取ってみたかによって見え方が違います。医師は診察時間のあいだでしか患者と接点がないのに対し(点)、職場や家族はもっと長時間接しているという(線)違いがあります。医師は患者からの訴えにフォーカスしますが、職場や家族は患者の行動にフォーカスします。ここに認識のズレが生じるのだと思います。どちらかが正しいというのではなくどちらも正しいのだと思います。うつ状態のある時点をみれば確かに元気なときもあります。一方うつ病にあって外出もままならない時点では他人と接することが物理的にもないので本人の証言以外、知る術がありません。
新型か旧型かを分けるのは何のためか
ひとりの一連のうつのなかで新型的な行動をとることもあるし、旧型的な行動をとることもあるのです。カテゴライズするのは対応や配慮を効果的にするという点で意義がありますが、病気なのかそうでないのかを判断するだけなら新型的か旧型的かなのでなく、以前はできていたのに数ヶ月の間にできなくなってしまったのかどうかで充分ではないかと思うのです。