ゆううつ部!レビュー
うつに関する書籍を読み終えたのでご紹介します。
どんな本?
今なおうつ病の著者が、フラフラの体を引きずって会いにいった9人の記録!
職業・年齢さまざまな9人のうつ病(+精神疾患)経験者へのインタビュー集です。300ページ弱の分量ですが会話形式なので早ければ1時間程度あれば読みきれてしまいます。9人も紹介されているのでうつ病と一口にいっても多様なきっかけ、トリガー、症状、回復への道のり、なんとかなりそうだという手応えの得方があることを知ることができます。
だれに向けて書かれたの?
あとがきで著者が述べています。
カミングアウトした人の本は多いけど、腕があるフリーランスや、有名人がほとんどじゃないかな。普通の人たちはどうやって世の中に戻っているのかな。会社員はもとの環境に戻るのかな、転職したりしているのかな
どこにでもいるうつ病な普通の人(とその周りにいる人)に向けた本です。
読んでみての感想
実はこの本を手にしたのは最近ではありません。1年以上前です。手に入れたときもひと通り目を通したものの、体調の変動が大きかったこともあり、あまり印象に残りませんでした。恵まれた人たちの物語だなぁ、自分には関係なさそうだ、自分はもっと困難な状態だ、自分はダメな人間だ。そんな風に感じていました。とてもじゃないけどここに登場した人たちのように頑張り屋さんじゃない。数ヶ月~1、2年で活動に戻っていける自信が持てませんでした。
約1年経って、積ん読のなかからポロッと出てきてまた読みなおしてみました。前回読んだときよりも気付きがたくさん得られました。それは私自身が就労支援施設に通ってポイントがわかったからなのかもしれません。きっかけ、症状、少し楽になってきてから何をしていたのか、概ねこの順番でインタビューされています。
きっかけにあたる部分をいくつかピックアップしてみると、
- 異動があって右も左もわからない中、全て自分で決めなければいけなかった。相談できる相手も乏しかった(コミュニケーション量が少なかった)
- 会話がほとんどない職場。黙々とパソコンに向かう仕事。指示はほぼメール。
- 受験を前にしてのプレッシャー。失敗したらダメだという追い込み。
- 就職活動をしてみて他人のいうことに影響を受け過ぎて何が正しいのかわからなくなってしまった。
- 上司がかわり建設的なコミュニケーションが通じなくなった。
- 認知症で介護している姑と口論になって。
- ...
同様に症状、
- カップラーメンの作り方がわからなくなった。常に38度の高熱にかかってる感じ。文字が読めない。
- 全身にだるさがあって集中力が続かない。涙が出てくる。夜眠れない。目覚めがよくない。途中で何度も目が覚める。
- 毎晩自室にいると涙が出てくる。過呼吸になる。
- 簡単なリストをワードで入力することができない。
- 頭痛がひどい。会話のペースが遅い。質問してから回答がくるまでにすごく時間がかかる。
- 涙がとまらない。だるくて起きていられない。テレビが観られない。本一冊が選べない。服一枚が選べない。
- ...
こんなふうにうつになる直前、最中、浮上に分けて読めたらもっと理解が早まったかなと思います。実際いまうつで苦しんでいる方はこうやって自分で整理しながら読むのは大変だと思います。私も1年前はそうだったように。ですので、ぜひ家族とか周りの人が整理してあげるといいのかなと思います。
ところで、この辺りまではたぶんいろんな書籍や雑誌、ブログで触れられているし、ある程度知識として広まってきていて共有できる部分かなと思います。たぶんこの本が気になった人はどのようにして浮上していくのかだと思います。私もいま回復期にあって何度か読み返しているんですが、こうするといいよというのが言えません。言えないというのは分からないという意味ではなくて環境によって利用できるものとそうでないものがかなり違うということです。この本に登場する人たちには力技で乗り切った人もいますし、偶然に環境が変わって改善した人もいます。会社の制度に助けられた人もいます。自宅から通える範囲にリワーク施設がある方はそれを利用することができますが、それが困難な人もたくさんいるでしょう。いろんな環境が整ってくることを願っています。ただひとつ自分の経験も踏まえて(この本の中でもたびたび出てくるワードですが)これをしておくといいよと言えるのは、自分から発信していく(カミングアウトも含めて)、コミュニケーションを取っていくということが大切かなということです。絶対に誰かの理解がなくてはならないからです。スーパーマンのような人が現れたらいいんですが、そんな人はそうそういません。自分もできることだけをやる。理解してくれる人も与えられることの範囲で手伝う。そういうことの積み重ねで回復していくのだと思います。