イチローのインタビューから見えたうつの人が立ち直るためのヒント
現状に満足することはいけないことか?
2013年現地時間8月21日、ニューヨーク・ヤンキースのイチロー外野手が、本拠地ヤンキー・スタジアムで行われたトロント・ブルージェイズ戦で日米通算4000本安打を達成した際のインタビュー。多くの人が新聞やネットで目にしたと思います。その中で私はこんな部分に目をひかれました。
─他の選手はどこかで満足している。イチローさんはない?
「いえいえいえ、僕満足いっぱいしてますからね、今日(脚注:4000本安打達成のこと)だってもの凄い満足してるし、いやそれを重ねないと僕は駄目だと思うんですよね。満足したらそれで終わりだと言いますが、とても弱い人の発想ですよね。僕は満足を重ねないと次が生まれないと思っているので、もの凄いちっちゃい事でも満足するし、達成感も時には感じるし、でもそれを感じる事によって、次が生まれてくるんですよね。あの意図的に、こんな事で満足しちゃいけない、まだまだだと言い聞かせている人は、しんどいですよ。じゃ、何を目標にしたらいいのですか、嬉しかったら喜べばいいんですよ。と言うのが僕の考え方ですけどね」
太字は筆者による
この考え方、うつ病の行動活性化と同じことのような気がします。やってみたら楽しかった。やってみたら嬉しかった。やってみたらスッキリした。小さな経験であればあるほど「こんなことで喜べるかっ!」と考えてしまうクセがついてしまっていると思います、うつの只中にある間は。「もの凄いちっちゃい事でも満足」し、「それを重ね」ることで「次が生まれてくる」。たぶん通院してると医師から散歩とか図書館行くとか、働き盛りの大人がやるにしては小さな行動を勧められて「そんなちっちゃなことを勧められるような人間に成り下がったのか…」と落ち込んだりします。
私自身、長いこと就労支援に通っていますが、ずっと就労支援に行くのは当たり前のことで、それ以外の時間にいかに充実した時間を過ごすか(就職活動をするとか、勉強をするとか)を考えていました。で、過活動になって翌日に疲労が残って就労支援を休んでしまう...。余計に自己嫌悪。たぶん「就労支援行ってるぐらいで満足してちゃいけない」って考えていたんだと思います。今は通うことが仕事だと思っているので、帰宅してからは何もしてません。その代わり、通所している時間は真っ向から自分を見つめなおすようにしています。
何に対して満足するのか
小さなことに満足していいか、現状に満足してはいけないかということは、私はどちらも正しいと思います。イチローもきっと何かを追っているはずです。私の考えでは、称賛されることは目標にしていないのかなってことです。他者からどう評価されるかは目標にしてないけれど、自分で設定した目標への追究は弛みなく続ける。その過程で自分の進歩は素直に喜べばいいという視点は参考になるのではないでしょうか。