うつ病患者の生活

うつ病と診断されて9年の42歳。休職や転職を繰り返して2015年はアルバイトとして社会復帰。そんな人はこんな生活をしてるよって日記です。認知行動療法、対人関係療法、週間活動・気分記録表、メンタル・フィジカルチェック、障害年金など取り組んでいることを記録しています。

障害年金の審査請求が棄却されました。

いきさつ

障害厚生年金3級の受給を申請し棄却されたため2013年6月、社労士さんの協力を得て東海北陸厚生局社会保健審査官に対して審査請求を行いました。2014年1月結果が届き、不支給の決定はくつがえりませんでした。障害年金については不明な点が多く、インターネット上でも様々な憶測が飛び交っており、何が事実なのか、どこからが憶測なのかよくわかりません。ですので私が行ったことを事実と推測に分けて記録しておきたいと思います。

提出した資料

審査請求までに全部で資料を9点提出しました。

  1. 現症時(裁定請求日)の診断書
  2. 障害認定日(初診から1年半後)の診断書
  3. 病歴・就労状況等申立書
  4. うつ発症から現在までの時系列の表
  5. 添え状(納得できない点とどうして欲しいのかを簡潔に書いた挨拶文です)
  6. 障害認定日の診断書についての追記文章
  7. 現症日の診断書についての追記文章
  8. 診断書裏面(日常生活活動能力)についての追加文章
  9. 6~8に対する医師からの意見書

1~3は始めの申請時に既に提出済みのもので4~9が審査請求時に任意で追加提出したものです。

決定書にかかれていたこと

私が不服と感じた点について再検討して欲しいと訴えましたが、ひとつひとつについて反論してはくれませんでした。 決定書は全30ページからなっていました。約28ページ分は提出した資料を書き写してあります。データではなく印刷した文章を提出しているので全て手打ちで書き写したということになります。審査請求から決定まで6ヶ月要しているのは、申請者が膨大で審査官の数が足りていないという事情もあると思いますが、こんな手仕事をしている部分にも原因はありそうです

棄却の理由

棄却の理由として明記されているのが確認できたのは4箇所です。

  1. 障害認定日について、診断書(資料2)にある日常生活能力の判定(裏面)には「できる」、「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」が多い(ざっくり書いていますが実際は一項目ずつ羅列しています。後述します)。
  2. 障害認定日において、一般雇用として◯年間勤務しているとされ、仕事場での援助の状況や意思疎通の状況は「やや困難を要することがあった。休職中」とあるのに、時系列(資料4)によると障害認定日当時、休職していない(ように受け取れる)。病歴・就労状況等申立書(資料3)によれば出勤状況は前月15日、前前月18日である。
  3. 裁定請求日について、診断書(資料2)にある日常生活能力の判定(裏面)には「できる」、「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」が多い。
  4. 意見書(資料9)は原処分後に請求人(私)からの申し立てにより作成されたもので診療録(カルテ)に基づくものではないため不採用とする。

 これらのことから総合的に判断すると、厚生令別表第1に定める障害等級3級に相当するとされる障害の程度である「... 精神又は神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」に該当すると認めることは困難である。

判断の際、見ていること見ていないこと

ここから先はあくまで私の推測です。事実とは異なる可能性があるという点に留意して下さい。棄却理由を読んでみて感じたこと。2点あります。1点目。初めに医師に書いてもらう診断書が全てを決めたという印象をもちました。 特に裏面の日常生活状況という欄。 医師に日常生活についてヒアリングを受け、医師がレ点チェックを入れていくだけの作業としては簡単なものですが、ここで「できる」、「自発的にできるが時に助言や指導が必要」にたくさんチェックが入る程度だとかなり厳しいと後に知りました。いくつ「できる」「おおむねできる」があると棄却になるとか数字はわかりませんが、棄却理由にこの部分を多く費やしていることから(とは言え、羅列してあって最後に「総合的に判断」したというのみの記述ですが...)審査官はここを重視しているものと思われます(社労士さんもここを多く「できる」「おおむねできる」にしてしまったことが残念な結果につながったと仰っていました。「できる」と言っても現実こんなふうだったんだと追加文章で訴えましたが、棄却理由にはその点は全く触れられていません)。診断書には医師がコメントを書く欄があり、そこには「日常生活活動能力にむらがあり、労働能力は低下している」とか「仕事場での援助の状況や意思疎通の状況はやや困難を要することがあった」等の記述をしていただきましたが、決定書では転記するのみで判断材料として「ああも受け取れる」「こうも受け取れる」と検討した跡は文面からは伝わってきません。意見書(資料9)が不採用になったことも“医師のコメントは判断材料にしない”という意思が感じられます(たぶん「診療録に基いて」と一筆いれていただいたとしても材料にしてくれない気がします)。

診断書裏面

 

2点目。自分で記入する病歴・就労状況申立書について。私は就労していました。週に1~2日欠勤し、遅刻していました。仕事内容も軽作業に抑えてもらう配慮をしてもらっていましたし、そのことも追加文章(資料6~8)で訴えましたが、決定書にはその部分に一切触れていません。就労していた事実があった場合、職場で配慮をされていたことを数字などを使って客観的にわかる形で記述することはどんなに字数を費やしたとしても極めて困難です。だからといって就労していたのに就労していなかったとウソを書いてはいけませんが、配慮の度合いを伝えるのは現実問題難しいと感じました。数字面で訴えられる部分として「出勤の状況」がありますが、どれぐらい休んでいたら(もしくは働けていたら)「労働に制限が必要」と認められるか。棄却理由にもわざわざ出してきていますので、何らかの数字的な線引きはありそうです。病歴・就労状況等申立書裏面

障害年金が支給される要件

日常生活もままならず(シンクには汚れた皿が放置してあり、ごみも出していない、いつも寝間着をきて過ごし、掃除は年1回するかしないか、通帳記入なんてもう何年もしておらず、電話も出ない、意思疎通も困難、通院も付き添いがなければ困難)、そして就労していない(休職中であるとか、就労していたとしても週1日かつ短時間かつ配慮ありとか)。イメージとしてはこんなところでしょうか。果たしてこんな状態まで陥ってしまった者が社会保険事務所へ行ったり、書類を用意したり、社労士さんに協力を求めたりできるでしょうか。今一度、制度の趣旨、誰が誰を支援するための制度なのか、その人達を支援するためにはどのような経路で発見してあげられるのか、よーく考える必要があると思います。困っている人がいて、放って置いたら自分まで困るようになってきた、という状況になってしまう前に。

日常生活困難&働いていない>日常生活困難&少しだけ働いている>日常生活できる&週半分くらいどうにか働いている>日常生活できる&なんとか働いている。今、障害年金が支給されるのはアンダーラインを引いた領域の人達のみです。

まとめます。決定書の棄却理由を読んでみて障害年金は以下のような流れで決定されているのではないか、と推測します。

障害年金支給までの流れ

 

もし過去に戻って申請をするとしたら 

診断書と病歴・就労状況等申立書以外に資料をあれこれ添付しても手作業で書き写す作業が増えるばかりで決定書が分厚くなるだけです。中立的立場の第3者による記録(タイムカード等、勤怠簿、給与明細書)があれば添える意義があるかも知れませんが、それらを用意することはとても困難だと思います。まずはシンプルに診断書と病歴・就労状況等申立書を矛盾なく作成することに集中することが大切だと思います。②の部分はたぶんこれくらいだったかなと曖昧なまま記入しない。できるだけ情報を集めて正確に書いた方が良いと思います(フルタイムなのか短時間なのか、デスクワークなのか体力仕事なのか、月に何日就労したか、一日何時間勤務したか)。①の部分については、もし社労士さんを代理人に立てる場合、少し神経を使います。社労士さんはここがキモだと知っているので、医師に細かくアドバイスします。一方、医師によってはそれを操作と受け止めてしまって関係がこじれてしまうことがあります。ですから社労士さんを立てると伝えた時点で診断書を書くことに消極的になってしまう医師もいます。こんな残念なことが起こるのは、医師や一般人が想像する「できない」と障害年金上の「できない」に大きな乖離があるためです。ふつう、一般的に言って、通常、常識的には「◯◯できない」と言ったら「こういう状態のことを指すよね?だよね?」という解釈の幅に差があります。③の部分、病歴・就労状況等申立書は自由記述のため「倦怠感があって」「体が重く」「頭痛がして」「目眩がひどく」などいろいろと症状を訴えたくなるところですが、それらは自分に都合よく書いていると判断材料にはしてもらえません(棄却理由には一切触れられていませんでしたから)。症状についての記述は診断書に医師が書いてくれますし、審査官にとってはそれだけが唯一“中立な立場からの客観的な視点"と認めていますから、診断書に簡略に書いてもらえばそれで充分です(逆に、診断書以外に書いてもらっても“中立な立場からの客観的な視点"とはならないのは棄却理由からも明らか)。症状がどんなであるかの記述はあまり重要視されません。それよりはデータ的なことがら(月に何日就労し、一日あたり何時間勤務し、遅刻・早退が何回とか)を書く。その上で、大事なのは記述が①と②の内容と矛盾していないこと。時系列がずれていたり、休職・失職期間が一致していないことを見逃してはくれませんし(できるだけ情報を集めて正確に、と書いたのはそのため)、療養や息抜きのために旅行した等の記述も①に矛盾しかねないので(その事実があったとしても)わざわざ書く必要はない(書かないこと=ウソをいったことにならない)。こんなところでしょう

※全て筆者の推測です。このように決定されているという事実は確認していません。これから申請してみようかと思っている方に参考になれば幸いです。

(2014/3/5追記)審査官にとって「信頼できる第三者の意見」とは診断書(上記提出書類の1と2)のみです。同じ医師が書いたものでも他の書類は審査官にとって「信頼できる」に値しません。つまり審査官は日本年金機構厚労省)が用意した書式に医師が署名した書類のみを信用するということです。それ以外の書類を何枚も費やしても審査官は矛盾点探しに力を注ぐばかりですし、矛盾点がなくても「原処分後に請求人(当事者)からの申し立てにより作成されたもの」というキラーワードによってはねられてしまうことが私の経験からわかりました。病状そのものではなく、どのように生活に支障が出ているかというデータと、書類間での相違がないことに集中することが大切です。